二度も三度も同じことやってられないから。忘れちゃいけないから。
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この日こそは、私の人生で決して忘れることのできない一日となったことに違いない。こういうとき、こういう日付を、私はそう簡単に忘れたくないと思いながら、どんどんと忘却の彼方に追いやってしまってきた。しかし今回だけは、正真正銘忘れたくない一日となった。
始まりはいつも突然に——。いやいやそんなことではなく。
昨年参加したパーティで、着物や伝統文化に詳しい人と知り合い、着物に興味があると話したところ、一緒に買いにいかないかというので二つ返事で浅草まで出かけることに。
数件のお店を回り、着物はもちろんのこと、襦袢も羽織も帯も腰ひもも、それから下駄まで入手した。それも破格のお値段で。たぶん、一生これから終えるまで、こんな値段で一式揃うことなんて二度とないだろうと思う。
お着物を購入したのはちどり屋さん。浅草寺の脇を抜けてすぐのところにある、男性物専門の古着物屋さんである。「こればっかりやってたらうちも潰れてしまうからね」と苦笑いの、羽織から帯までほとんどセットになっている新古品アンサンブルを頂いた。一緒に来ていた女性陣の「似合いますね」に初めは戸惑ったものの、なんだかその気になってきて、果ては近くのコンビニまで走ってお金をおろしてきて、購入めでたし。オーソドックスな紺のウール製。お店の親父さん曰く「標準的な体型」だからなのかサイズもぴったり。こんな買い物はそうあるものではない。
続いて、腰紐を頂戴したのはリサイクルきもの福服さん。浅草店はビルの3階にあり、こじんまりしていると思いきや女性もののお着物はなかなかたくさんあり、小物も楽しく選べそうであった。腰紐の他にも、着物に詳しい知人曰く「男性着物は胸元がはだけやすいからおススメしている」という合わせ止を購入。S字型をしているが見た目はネクタイピンやヘアピンにも似ていて、これで「着物の襟元を止めておく」のだそう。そんな話を聞いて「ふむふむなるほど」となっていると、後ろから「そんな便利なものがあるのですか」と知らないお客さんにも好評となった合わせ止。男性にはおすすめだそうなので、ぜひおすすめされてください。1000円程度で買えます。
下駄は和泉屋さんのところで相談もさせていただき、よろしくお買い上げ。お着物一式をそろえるコンセプトとして今回は「大正時代の売れない作家」を考えていると伝えたところ、それなら「白木の下駄で鼻緒は黒」しかないのだそうだ。自分としてはサンダルのような形になっている、雪駄と下駄の合いの子のような奴が履きやすそうだと思っていたが、コンセプトにはこれしかないと満場一致の結論にそのまま流される。
生まれも育ちも東京ながら、東京といえどこれは広いのであって、浅草に来たことなど数えるほどしかなかったから、散策もそれなりに楽しんだ。
誰が何と言おうと雷門。そこから続く仲見世通り。そして出てくる浅草寺。「そういえば浅草寺は寺なのだから仏教なのだろうが、何宗なのだろうか」と同行する人に聞くも案外知らないもので、調べてみるとどうも推古天皇の時代にまでさかのぼる歴史があり、もとは天台宗であったが戦後に独立…現在は聖観音宗というものの総本山なのだそうだ。正直に申し上げて、少しどころではなくよくわからない。世界各地からの観光客の多さにも目を見張るばかり。これをしてJAPONISM! COOL JAPAN!と思われては行き過ぎ感があるが。
ほかにも、いなりずしとかんぴょう巻で(というしかそれしかない)浅草志乃多寿司さんに総勢9名の大所帯でとびこんで小腹を満たしたり、私の生活からすれば見たこともない刷毛・ブラシの専門店でタワシ製のウサギを拝んだり、饅頭を食らう良いにおいに腹を鳴らすなど、どこかのおのぼりさんも顔負けの楽しみようであった。
座敷を予約までしてくれていた(幹事に感謝)お店はうなぎ久保田。浅草から銀座線で末広町まで移動し、歩いてすぐのところにある。お重に入った鰻など、私のような下々の者はついぞ見たこともなかったが、今や高級魚となり土用の丑の日にも食べることがなくならんとしている中、こんな席はもう二度と訪れないかもしれないと思い、奮発に奮発。いやはや、満腹になり話も盛り上がってよい席であった。感激。
日本酒の詳しさは伊達ではない男も現れ、これは実によかった。シェアハウスの人脈ってすごい(私はシェアハウスに住んでいないが)。
基本的に食物の写真をネットに載せまくって「ドヤァ」しているのは好きではないのでここでも載せない。見たい・食べたい・飲みたいならご自分の目で見て舌で楽しんで夜道の一つも歩いてみてくださいな。
とまぁ、えもいえぬ道楽エントリになったわけだが、私はこの日が来るのをそれこそ一カ月以上も待ち望んでいたわけなので、そして人生初のお着物購入となって晴れやかな気分なので、こういうことも世の中あるだろう。と。忘れず覚えておこう。
記 0x20150131